RCサクセション、タイマーズと中・高生の頃からファンだった日本語ロックの神様・忌野清志郎が、突然自転車に乗って木村拓哉のドラマ「ギフト」にメッセンジャー役で登場してきたときは驚いたもの。
自転車にハマった今となっては清志郎の走っていた理由がわかったような気がしている。
キューバや沖縄、故郷を走る清志郎の世界を垣間見ることができる。
DVDも付いている。
まず、冒頭の清志郎の言葉がいい。
自転車はブルースだ。
クルマや観光バスではわからない。
走る道すべてにブルースが溢れている。
楽しくて、つらくて、かっこいい。
憂鬱で陽気で踊りたくなるようなリズム。
子供にはわからない本物の音楽。
ブルースにはすべての可能性がふくまれている。
自転車はブルースだ。
底抜けに明るく目的地まで運んでくれるぜ。
忌野清志郎
自転車はブルース。そして、「サイクリングブルース」という曲もDVDに収録されている。
ロックでも、ジャズでも、カントリーでもなく、ブルース。
清志郎らしい言語感覚。
楽しくて、つらくて、かっこいい。
この一文は、自転車好きの気持ちをストレートに表現している。
ロードバイクを手に入れたとき、道具としてのかっこよさにまず惚れ惚れする。
ロードバイクに乗るとまず楽しい。でも、楽しいだけじゃない、つらいときも多い。いや、つらいから、楽しい気もする。自分の限界を超えたスピードを持続して出しているとき、坂を必死の形相でのぼっているとき、つらい。
でも、そのつらくて楽しいロードバイクで駆ける自分をかっこいいと勘違いしている。
本の内容は、キューバ・沖縄など、清志郎の旅乗りの記事で構成されている。
大判の書籍なので、写真が大きく美麗で、眺めるのも楽しい。
付属のDVDはおまけで、そんなキューバの風景やミュージシャンとの対談、そして、サイクリングブルースのPVを楽しめる内容。総じて、自転車も好きで清志郎も好きという結構ニッチな人に向けた内容なので、どちらかだけ好きな人だとちょっと物足りないかもしれない。
清志郎がバイクにまたがるときに頭の中に流れたブルース。
まだまだ、僕はその境地に達していないが、いつか僕も清志郎の聞いたブルースをキューバの峠で聞きたい。
Route92